仕事で溺れていた時に助けてくれたのは、児童相談所や一時保護所の知見だった〜千葉県児童相談所職員1ヶ月目〜
1 必死に手探りで働いていた1ヶ月目
シリーズ「なぜ元職場の千葉県・児童相談所に裁判を起こしたのか」の職員時代の勤務編。
前回は、入庁してすぐに退職・異動になった同僚たちの出来事を振り返って記事を書きました。
前回までの記事のなかでお伝えしたように、休憩も研修もOJTもないような状態で手探りで働いていました。
そんなときに、とても救われたのが児童相談所や一時保護所について書かれた本や記事でした。
2 勤務自体の「楽しさ」と不安感
仕事に就いて3週間が終わる。
子どもと接すること自体は結構楽しい。まだまだ仕事で覚えないといけないことも多くて、いっぱいいっぱいになるけれど、それが支えになって続けられている。
ただ最近の悩みは、いくら休みの日に寝ても気持ち的に休まらないこと。なんだか水に溺れそうな感じのあっぷあっぷな感じが苦しかった。
(4月19日日記)
まだまだ仕事を覚えるのに必死な中で、私にとって支えだったのは一時保護所の子どもたちとの関わりでした。
これは今になっても変わらない気持ちですが、一時保護所の子どもたちと関わることは、とても楽しかったんですよね。「楽しい」というと語弊はあるんですが、今はその言葉以外しっくりくるものがなく・・・(「やりがいがある」というと、子どもたちは職員の「やりがい」のためにいるわけではないし。「とても大切な時間だった」というと、なんか他人事みたいな感じですし。)
かといって「楽しかった」というのもやはり色々語弊を生むんですが、一時保護所という子どもたちをケアするための職場で、自分自身の気持ちも豊かになっていくような感覚が「楽しかった」のだと思います(ただもう少し別の言葉がありそうだなという気もしますが)。
とはいえ、やはり休憩もなく、研修もOJTもない状態というのは、勤務する身としては、非常に不安な状態でした。
研修やOJTというのは、その勤務場所の職員が身につけるべきスキルや態度を教える機会ですので、それが全くないというのは、全くそれらがない生身一つで働くことになります。つまり何も職員を守るものがないのです。
何か失敗すれば、「それは私の経験が浅いから」だと自分自身を責めることにつながりますし、自分自身を責め続ければ、ネガティブに深刻に悩んでいきます。
そんなこともあり、お休みの日や帰宅後も、結局悩みを持ち続けていました。もちろん仕事ですので切り替えができることが望ましいのですが、仕事で何も守られない状態で心身が直接傷ついていくこともあるので、そううまく切り替えできませんでした(ましてや入庁してすぐの状態でしたので)。
なんとか意識的に休もうとしますが、いつの間にか仕事のことを考え続けていたり、夢の中に出てきたりと、全く休めない状態が続いていました。基本的に休みの日は1日寝ていることが多かったように思います。
3 仕事に関わる本の知見が身を守ってくれた
そんなときに私を守ってくれたのは、児童相談所や一時保護所や子どものケアに関わる書籍でした。
今日までは仕事の時間以外は仕事に関連するものは考えないようにしようと思っていたが、いっそ仕事に直接関連する本とか論文とか読んでみようかと読んでみた。
すると不思議なことに気持ちが軽くなった。「ああ、それあるある!」という共感や「ああ、そんな視点があるのね」という意外さそして「これ生かしてみようかな」という実践が気持ちを軽くしてくれた。
案外、仕事以外の時間でも仕事について別の角度から論じてくれる資料に目を通した方が気分転換になるのだなという発見だった。
(4月16日日記)
意識的に仕事を切り替えようと帰宅後や休日は仕事に全く関係ないことをしていましたが、うまく切り替えられなかったこともあり、
あえて児童相談所や一時保護所、子どものケアに関する書籍などを読んで、仕事について考えてみました。
すると、不思議なことに気持ちが軽くなっていきました。日記にあるように、すごく自分自身を癒してくれたり、モチベーションを維持してくれたり、救ってもらった感覚がありました。
なるほど、私がうまく切り替えられなかった理由には、仕事そのものへの理解・知識が身についていないことによる不安感だったのかと思いました。
研修やOJTがないことの弊害はここに出るのだなと思います。
4 勤務1ヶ月目で救ってくれた本たち
参考までに、私が入って1ヶ月目に支えられたと思う本たちについて紹介したいと思います。
4−1 慎結『かぞくを編む』(2019年・講談社)
子どものための「特別養子縁組」をめぐり、さまざまな家族のかたちを描く人間ドラマ!
様々な理由から、産みの親と一緒に暮らせない子どもの幸せのため、子どもと養親のマッチング、産みの親のフォローと日々奮闘している、あっせん機関「ひだまりの子」の若手ワーカー・須田ひより。ある日、熱意ある養親希望者・黒沢夫妻の面談に立ち合うことに。 「かぞく」の形を問いかける、人間ドラマ!
かぞくを編む – 講談社の女性漫画誌BE・LOVEのHPより
https://be-love.jp/c/kazokuwoamu.html
とはいえ、やはり仕事をしているとなかなか活字が頭に入ってこないこともあったので、最初に手にしたのがこの漫画でした。
直接一時保護所ではないのですが、児童相談所も関わるような漫画だったので、読んだ作品でした。
この先も私はいろいろ漫画から学ぶことが多かったので(一時保護所についても)、適宜紹介していきます。
4−2 『興奮しやすい子どもには愛着とトラウマの問題があるのかも』(2017年・遠見書房)
この本では,吉原林間学園の試行錯誤の中で磨かれてきた,子どもも職員も「みんなで楽しい」生活を送るための考え方と具体的な方法を紹介しています。いまだ発展途上の内容ではありますが,叱られても直すことができず逆に興奮してしまう子どもたちをどう捉え,どう接するかについて新たな方向性を示すことができるのではないかと考えています。
「はじめに」遠見書房HPより
https://tomishobo.com/catalog/ca032.html
こちらは子どもとの関わり方に悩んでいたときにすごく支えられた本です。別の児童相談所の方に教えていただいた本でした。
静岡県の児童心理治療施設の先生方が書かれた本で、一時保護所の子どもたちとかなり共通した部分があったので、とても参考になりました。ページ数は100ページなく、またかなり具体的な実践につながるので、読みやすい内容です。
この本は勤務時代ずっとロッカーに入れては見て、お守りのように持っていた本でした。
4−3 慎泰俊『ルポ児童相談所-一時保護所から考える子ども支援』(2017年・筑摩書房)
児童相談所併設の一時保護所は、虐待を受けた子どもや家庭内で問題を起こした子どもらが一時的に保護される施設。経験者の声は「あそこは地獄」、「安心できた」と二つに分かれる。社会起業家である著者自ら一〇カ所の一時保護所を訪問、二つに住み込み、子供たち、親、職員ら一〇〇人以上のインタビューを実施。一時保護所の現状と課題点を浮かび上がらせ、どのように改善したらよいのか、一方的でない解決の方向性を探る。
筑摩書房HPより
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480069399/
私はこの本は、一時保護所とはいったいなんなのかを、そもそも理解する入門書として読んでいました。自分がいったい何の仕事をしているのかが全くわかっていなかったところ、こうした本がとても理解することを助けてくれました。
5 おわりに
【勤務一か月が終了】
タイトル通り。ちなみにGWも関係なく普通に勤務。いやはや、色々担当するにあたって、学ばないといけないことはたくさんだなと。
今はとりあえず、小学生向けの自由時間に行う授業(何の教科でも良い)とレクリエーションについて全然知識も経験もないので、何かで学べないかなあと模索中です。
(4月29日日記)
そんなこんなで勤務1ヶ月目を無事(?)に終えた私でした。5月からは、子どもたちの数が定員の2倍を超え、忙しさが全く変わったり、残業が増えたりしながら、子どもたちのケアのあり方に葛藤していくことになります。
その辺はまた次回以降の記事にて。