読書メモ 無力感と絶望感と支援について
参考論文 岩倉拓(あざみ野心理オフィス)、2022「被災地における中長期のこころの支援ー精神力動的な観点から」『こころの科学 222号 2022年3月』
https://www.nippyo.co.jp/shop/magazine/8722.html
外部から訪れる支援者は、私のように意気込みながら支援を開始するが、無力感に打ちのめされ、「お客さま的」な支援から展開することが難しく、真の支援にたどり着かないことが多い。支援過程では無力感や絶望感は不可避なのだが、コンテインメントの視点でいえば、それも受け取った重要なデータとして、感じ、考え、できればその理解を共有することが災害支援を長期に続けていくことの鍵になると私は考えている。
(岩倉 2022: p3-4)
岩倉(2022)では、災害支援の現場での経験を振り返り、上記のように述べている。
岩倉は、精神分析理論における「コンテイニング(包容)」の概念を補助線として被災地で実践しながら、
上の引用のような見解を述べた。
上の引用を解釈すると、「外部から訪れる支援者」が「真の支援」にたどり着くまでのフェーズとしてこんな感じだろうか?
①「意気込みながら支援」
②「無力感に打ちのめされ」⇨このままであれば「お客さま的」な支援のまま
③無力感・絶望感を重要なデータとして感じ、考え、理解を共有する ⇨「真の支援」への一歩
もちろん文脈は災害支援の現場ではあるが、この観点は他の福祉・教育現場における支援でも重要な意見だと思われる。
①福祉・教育などに関わる人は、何かしらの動機・原動力を持つことが多く、こんな支援をしたいなどの理想を少なからず持っていることが多い。
②その中で現場に入ると、現実の難しさ・複雑さ、相手のニーズになかなか応えられないもどかしさなどに打ちひしがれることも多々あるだろう。
③こうした無力感や絶望感は、大事なデータであり、それを感じること自体は悪くはないこと、そしてそれはなぜ起きているのか考え、理解をともにはたらく人と共有すること
こうしたことが、おそらく長期的に働くために重要なのだろうと、岩倉の論説をみて考える。