東京都の児童相談所職員の人材育成について〜参考記事:東京新聞9月7日「東京都内の区立児童相談所が開設ラッシュ」 

けあけあ
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1 児童相談所の開設と人材育成@東京

 2024年9月16日に東京すくすく(東京新聞)、9月16日、東京都内の区立児童相談所が開設ラッシュ 2026年度までに12区に 児童福祉司らが足りず開設延期も が公開された。

 東京都内で区立児童相談所(児相)の開設が進む中、児童福祉司などの資格を持つ専門職の確保が課題となっている。2026年度までに半数超の12区で開設される見通しだが、人手が確保できず開設を延期する区も。増える児童虐待にきめ細かく対応するため、人材の確保・育成が急務となっている。(上記記事リード文)

 この記事は東京新聞、2024年9月7日、児童福祉司ら「人材の奪い合い」が激化 新宿、品川…東京23区内の児童相談所、人手足りず開設延期が相次ぐの記事をもとにしている。

 ここでの主なテーマは、児童相談所の人材確保・人材育成(ここでは特に児童福祉司)だろう。

2 東京都の対策 「児童福祉人材トレーニングセンター」

2−1  東京都児童相談所の「職員の育成」について

 記事の中で、2022年度から「児童福祉人材トレーニングセンター」が一つ人材育成の取り組みとして取り上げられていた。

 東京都のホームページには、児童相談所の「職員の育成」について以下のような記載がある。

東京都児童相談所では以下の二つを基本方針としています。

「人材は組織全体の財産ととらえ、職員一人ひとりはその育成の重要性を十分に理解し、職場を挙げて取り組む」

「新任職員については、3年間を目途に児童福祉司·児童心理司の専門性を確保できるように育成する」

東京都福祉局HPより
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/saiyou-jisou/development

 特に後者の「3年間を目途に児童福祉司·児童心理司の専門性を確保」からみると、東京都としても児童福祉司や児童心理司の育成には、少なくとも3年はかかる見込みと読める。

 東京都は、人材育成の三本柱を掲げているが、そのうちの「研修(Off-JT)」の一部を担うのが、記事で紹介があった「児童福祉人材トレーニングセンター」という位置付けだろう・

2−2 「児童福祉人材トレーニングセンター」について

 この「児童福祉人材トレーニングセンター」についての詳細はHPなどではあまり詳細は公開されていないが、このこの運営を担うのは株式会社トライだということが、入札情報などから伺える。(家庭教師のトライとは別なので注意)

参考ページ
nSearch 「令和4年度児童福祉人材トレーニングセンター研修運営委託」
・NISS「令和5年度児童福祉人材トレーニングセンター研修運営委託」
・NISS「令和6年度児童福祉人材トレーニングセンター研修運営委託」

 この株式会社トライのHPによれば、会社案内や広報誌、パンフ制作などを業務とする総合政策会社でありながら、イベントの企画運営を担う企業であるようだ。東京都にもいくつも入札しており、その業績から今回も運営を担ったというところだろうか。(上記の過去の入札情報なども参照)

2−3 「トレーニングセンター」の研修内容について

こちらも特に東京都のHPなどに公開されているわけではないが、おそらく上記企業から研修を委託されたと思われる株式会社フィアレスが、一部の研修についてnoteで記事を公開している。

note(株式会社フィアレス)「コミュニケーションを「センス」で終わらせずトレーニングしたい|東京都児童相談所」

note(株式会社フィアレス)「東京都児童相談所福祉専門職|コミュニケーション&リフレッシュ研修」

内容については上記記事をご覧いただければと思うが、この研修を担った株式会社フィアレスは、主にインプロ(即興演劇を含むもの)をメインに研修を担っている会社であるようだ。

3 福祉だけでないスキルを身につける児童相談所職員

 児童相談所における人材(児童福祉司・児童心理司・一時保護所職員など)をいかに確保するということが、どの自治体でも大きなテーマであろう。

 東京都が3年という専門性を身につけるために必要な期間を具体化しているのも、現在児童福祉司の約半数が3年未満であるということも関連しているだろう。

 参考データ「令和6年度全国児童福祉主管課長・児童相談所長会議資料」p1512

 そうした職員たちも含めて研修に大きく力を入れることは大事であろうと思う。

 今回の記事で紹介された「児童福祉人材トレーニングセンター」は、特に児童福祉の専門的なスキルを研修するわけではないと思うが(受託企業などを見るとそう考える。専門的な研修はおそらく法定研修などで受けるのだろう)、

 こうした福祉以外の知見を取り入れることも、今後児童相談所の研修においてはメインになってくるのかもしれない。

 考えるべきことはいろいろあるが、ひとまず参考までに。

 

運営者について
飯島章太
飯島章太
フリーライター
元児童相談所職員での経験を活かして、子ども・若者のケアに関わる人たちに取材を続けています。著書に『図解ポケット ヤングケアラーがよくわかる本』 。
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