裁判ブログ編
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「子どもが生きやすくなる社会」は、私には語れない

けあけあ
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1 記事の趣旨〜「子ども」について語る自戒

 以下の文章は、1月18日に公共訴訟のクラウドファンディングのプラットフォームを運営していらっしゃるCALL4さんで企画してくださったイベントである「子どもが生きやすい社会をつくるには? 〜子どもを育てる現場を変える“アクション”を考えよう!」の前日に、知人に向けておくった文章に少し手を加えたものです。
 イベントは、登壇者石原悠太さん(「人間を育てる教員に、人間らしい働き方を」訴訟の田中まさおさんの支援事務局)、田中れいかさん(社会的養護専門情報サイトのたすけあい運営)、MCの犬山紙子さん(芸能界の有志からなる児童虐待防止の啓発をするチーム「#こどものいのちはこどものもの」立ち上げ人)の4名で「子どもを育てる現場を変えるアクション」について議論しました。イベントの様子は以下のリンクからご覧になれますので、よかったらご覧ください。
 そのイベントに向けて準備する中で考えていたことを言葉にしたのが以下の思いでした。そこには、「子ども」という多様な存在がある中でひとくくりにして語ってしまっている自分を自戒しての言葉でした。

2 「子どもが生きやすくなる社会」は、私には語れないー2023年1月17日の日記ー

 明日のイベントに向けて、色々考えてしまった。以下のことは、当日はきっと語れないけれど、思っていること。残念ながら、私に「子どもが生きやすくなるために」という、重いテーマはとても語れないと思っている。語り合うことはできる。でも、「その『子ども』とは誰なのか
」「そのテーマを語るときに『子ども』とされている人から話を聞いているのか」「『子ども』はその話し合いの場にいるのか」ということは、このテーマを語るというときには、欠かせないのではないかと思う。
 真面目に考えすぎなのは承知の上でなのだが、多種多様な「子ども」を、「子ども」と大きく一括りにすること自体が「子どもが生きづらいと感じる」原因なのではないか、と思う。だから、上のことを欠いて議論をする時点で、「子どもが生きやすい社会」を考える土台がないが私たちが語ってしまっているということを、まずは自分が認識することが、第一歩なのではないかなと思っている
 逆に、「なぜ私は『子どもが生きづらい社会』を作ってしまっているのか」と自分の中にある歪みに気づいていくことからしか始まらないのではないかと思う。
 もしくは、議論できることは「私たち今いる大人が生きづらい社会の中で、どうしたら私は生きやすさを感じることができるか」ということは議論できるのかもしれない。等身大だからこそ、語れることもある。私が「生きやすい」と思うことは自分しかわからないことも多いだろう。なぜ私たちは「子ども」のことだと、本人なしで「生きやすさ」を考えられると思えるのだろう。これは単なる私の中のテーマ。

3 日記を振り返って

 これはあくまで「私の中のテーマ」ですが、ここで書き残したかったのは、「子ども」について語る際に「子ども」とは誰なのか解像度をあげる必要があると思っていました。①「子ども」とは誰か、②その「子ども」を想像や推測だけで語らず、根拠をもって語れているか、③本人なしで語っている場ではないか、などに注意する必要があると考えていました。
 とはいえ、もっと語れることもあるのではないかとも感じていました。それは「どうしたら私は生きやすさを感じることができるか」と自分事に寄せて語るということでした。

 これはイベントの中でも語ったことですが、子どもの権利条約の批准を踏まえて、日本初の条例をつくった「川崎市子どもの権利に関する条例」について報告する集会の中で、子どもたちは以下のようなメッセージをおとなにむけて発しています。

まず、おとなが幸せにいてください。おとなが幸せじゃないのに子どもだけ幸せにはなれません。おとなが幸せでないと、子どもに虐待とか体罰とかが起きます。条例に”子どもは愛情と理解をもって育まれる”とありますが、まず、家庭や学校、地域の中で、おとなが幸せでいてほしいのです。子どもはそういう中で、安心して生きることができます。」

子どもの権利条例子ども委員会のまとめ(2001年3月24日 条例報告市民集会)

 子どもについての「生きやすさ」を語るのと同時に、きっと大人の「幸せ」についても語る必要があるのだと思います。それはきっとコインの裏表のような関係で、どちらかが欠けてもいけないのだと思います。そんなことをこのメッセージは教えてくれていると思います。
運営者について
飯島章太
飯島章太
フリーライター
元児童相談所職員での経験を活かして、子ども・若者のケアに関わる人たちに取材を続けています。著書に『図解ポケット ヤングケアラーがよくわかる本』 。
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