裁判ブログ編
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一時保護所の現状を伝える難しさ~注目度について~

けあけあ
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こんにちは。飯島章太です。

今日は私が一時保護所の職員としてまだ千葉県庁に所属していた時に匿名で2021年5月1日に書いていた記事を再編集してみました。よかったらご覧ください。

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さて、今日から一時保護所の現状について伝える難しさについて書こうと思います。

1.一時保護所への世間の注目度は?

[blogcard url=”https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210430/k10013003551000.html”]

上記のNHKのニュースでは、児童相談所の職員が事件の度に批判をされる中で、どのような仕事の実情があるのかについて取り上げたものでした。こうした児童相談所の職員の悲痛な訴えが出てきたことは大きな進歩だと思います。

ですが、この記事の中で一時保護所について書かれた部分はこの部分しかありませんでした。

しかし、「なんでも児相任せ」では、さすがに限界があると感じます。さらに、「子どもの安全」が確保できた後にも課題がありました。「一時保護所」や「児童養護施設」から、「集団生活に馴染めないので、他を探してほしい」といわれるなど、子どもの預かりをめぐって、何度もやり取りをすることが少なくないといいます。

一見「一時保護所」が児童相談所とは別個にあるように見えますが、一時保護所は児童相談所に「附設」してあるものです。物理的には児童相談所とは離れている一時保護所ですが、機能としては一時保護所は児童相談所の一部です。

ニュースで注目されるのは親御さんと面談を中心にする児童福祉司であることが多く、児童福祉司イコール児童相談所職員と認知されていることが多いのではないでしょうか。

児童相談所には、児童福祉司だけでなく、子ども達と面接をする児童心理司、一時保護所の職員(保育士や児童指導員等)や、弁護士や医師等がいます。世間の認知度的には児童福祉司が注目されているため、相対的に一時保護所というものが注目されづらいかと思います。

2.法律や制度としての注目度は?

では国としての注目度はどうでしょうか?そもそも児童相談所は法律に基づき自治体によって運営されています。当然、行政機関は法律等によって運用されます。では一時保護所の法的規定はいかなる規定でしょうか?実は一時保護所について書かれた法律は以下のみです。

児童福祉法第12条の4
「児童相談所には、必要に応じ、児童を一時保護する施設を設けなければならない」

児童福祉法に、一時保護所の設置義務が書かれているのみです。では運用に関する具体的な規定はどこに定められているかというと、2018年の「一時保護ガイドライン」に具体的に規定があります。

[blogcard url=”https://www.mhlw.go.jp/content/000477825.pdf”]

元々は児童相談所運営指針の一つの項目にあったものですが、以下の趣旨のもとガイドラインが作成されました。

現状において、一時保護に関して指摘されている問題解決に向け、自治体や関係者が進むべき方針を共有し、一時保護を適切に行い、実効ある見直しを進めることを目的として示すものとして、今般、児童相談所運営指針の一時保護に関連する記載を削り、別添のとおり一時保護ガイドラインを作成した

(子発0706第4号平成30年7月6日)

 しかし、これはあくまでもガイドラインなので、国からのアドバイスとしての効力しかありません。また2018年に改めて一時保護ガイドラインが作られたというのも、かなり最近のことであるように思われます。

加えて令和2年には、一時保護に関する検討会が行われています。

[blogcard url=”https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-kodomo_554389_00020.html”]

「一時保護」に関する検討会において、一時保護所についての検討も第3回で行われました。近年になっては注目されつつあると言ってもいいかと思われます。

ですが逆にいえば、これまで「一時保護所」について国として検討会を行ったのは、今回がのことであるのも事実です。なぜこれまで一時保護所というものが注目されてこなかったのでしょうか。

3.私なりの解釈~多様な一時保護所~

その理由としては、一時保護所の運営がこれまで各自治体にとどまらず、各々の一時保護所によって運営を任されてきたという現実があるからだと考えています。一時保護ガイドラインには以下のように書かれています。

しかしながら、子どもの安全確保のみならず、権利擁護も図られる必要があることに加え、子どもの安全確保に重きが置かれ、子ども一人一人の状態に合わせた個別的な対応が十分できていないことがあることや、ケアに関する自治体間格差、学校への通学ができないことが多いなど学習権保障の観点からの問題、一時保護期間の長期化などの問題が指摘されている。(p1「Ⅰガイドラインの目的」より)

つまり自治体によってかなりケアの質に差があるということを問題視していることがわかります。私はこの差を大きく表しているのが、各一時保護所でのルールだと思います。2019年に東京都の一時保護所にて人権侵害的なルールが課されていることが公にされました。

[blogcard url=”https://www.asahi.com/articles/ASM7L04LJM7KUTIL04Z.html”]

 そこでは以下のようなルールがあったといいます。

私語禁止、会話を制約する、子ども同士が目を合わせることまで禁じる

ただこうした厳しい人権制約を課していた一時保護所があるのも事実ですが、一時保護所での経験がよかったと答える人もいます。

そうしたケアの質に差がある各々の一時保護所の中で、さらに経験者によっても感想が異なるということがあります。つまり、一時保護所は「こうである」「こういう場所である」と、なかなか一概にいえないことが、一時保護所がこれまで制度的にも注目されてこなかった理由があるように感じます。

さらに私なりの解釈では、① そもそも一時保護所が歴史的に注目されてこなかったこと、② 一時保護所各々で運営されているからこそ、一時保護所での統一した法律・ガイドライン・検討がされにくかったことに加えて、③ 一時保護所での生活を明らかにすることの危険性ということがあると考えています。

一時保護所は、かなり秘匿性の高い施設です。その場所も非公開ですし、職員の守秘義務の度合いも高いです。親御さんからの奪還の危険性も高い場所ですので、少しの情報も漏らすのは危険な施設になっています。

ですが一方で、一時保護所の秘匿性が高いがゆえに、これまで独自の運用をしてきた一時保護所では人権制約の面が強くなった一部の保護所もあります。現在、第三者委員会などの設置も努力義務であるので、外部の目が入ることはまれです。そうした中で、強く子どもたちが管理されている一時保護所も一部あります。

つまり、秘匿性をオープンにした際の危険性とオープンにしなければ脅かされる子どもの心身のバランスに揺れているのが今の一時保護所だともいえます。

こうした①歴史的背景 ②ローカルな運営文化 ③オープンと秘匿性のバランスの危険性の3つが絡まることで、一時保護所がこれまで注目されにくかった構造があるように思います。

4 2023年からの補足

当時から一時保護所がなぜこれまで注目されてこなかったのかということに関心がありました。人員増がされていくのは児童福祉司や児童心理司のみで、一時保護所職員は「児童福祉司・児童心理司等の増員」として「等」の中に含まれるのみ。どのくらい増員されるのかもされないのかもわからない。そこには注目度が大きく変わっているのではないかと思っていました。

そうした注目度のは背景には、歴史的なものもあれば、制度的なローカルな運営だけでなく、一時保護所という秘匿性が必要でありながらオープンさが求められる複雑なバランスが必要だからこそ、オープンに注目を集めることが難しかったのだということを私なりに理解していたところでした。

2022年の児童福祉法の改正によって、一時保護所について独自の基準を設けて、海峡改善を図ることが明記されました。その意味では、より一層一時保護所にスポットライトがあたってくることは確かだと思います。

それでも政府の政策としては、2022年12月に発表された「新たな児童虐待防止対策体制総合強化プラン」においても、児童福祉司や児童心理司に注目があたった増員が中心でした。一時保護所については、「体制強化」とはいいながらも職員の増加は明記されていません。

今後、児童相談所の管轄はこども家庭庁になります。そうした流れがありながらも、児童相談所の一部である一時保護所についての取り組みも進んでほしいと願うばかりです。

運営者について
飯島章太
飯島章太
フリーライター
元児童相談所職員での経験を活かして、子ども・若者のケアに関わる人たちに取材を続けています。著書に『図解ポケット ヤングケアラーがよくわかる本』 。
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